川越スカラ座② 番組編成・イベント担当:飯島千鶴さんインタビュー

映画館ではここ数年、様々な趣向を凝らした映画の上映企画・タイアップ・チケット割引などが行われている。

それらはいわゆる「集客」のためなのだが、スカラ座はその基準だけで企画を作るわけではないようだ…。

楽しそうに企画の話をしてくれる飯島さんは、間違いなく川越スカラ座のキーパーソンと言えるだろう。


こっちも一緒に楽しませていただいてるって感じです。


-飯島さんが川越スカラ座のプログラムや企画作りを始めた当初、どんな形で企画を考えていったんでしょうか?


飯島千鶴さん(以下、飯島):大して形っていうのはないんですけど、最初はそれまでやっていたようなことを踏襲していって、自分でいろんなことが把握できるようになってきたらオリジナルの企画をやったりしました。逆に言うと、今その当時やっていた企画はほとんどやってないかもしれないですね。


-当時やっていた企画というのは?


飯島:大学教授とか専門の方を呼んでお話を伺ったりとか。あとは映画に関連する人たちを呼んでの鼎談とかが割とありましたね。その頃やっていたような形では今やってないですね。どちらかと言うと、お客さん参加型の企画が私は多いかもしれないです。マサラ上映とか。


-マサラ上映…?


飯島:インド映画を観て、歌ったり踊ったりクラッカーを鳴らしたりしながら観る上映ですね。それはかなりの回数やってます。


-お客さん参加型にする理由はなんですか。


飯島:単純に楽しいからですね。私も参加するので(笑)。私も後ろで騒いでいて、基本的にはずーっと後ろにいます。


-後ろからお客さんが盛り上がってる姿を見ている感じですか。


飯島:いや、見てないです(笑)。やっぱりお客さんに声出していいよって言っても最初どうやったらいいかわからないじゃないですか。だから最初はスタッフが積極的にこういうものだって示していく必要があるんです。ただ最近の人は慣れてるので、特にインド映画だとみなさんの方がすごいんですよ。だからこっちも一緒に楽しませていただいてるって感じです。以前『レ・ミゼラブル』で発声可能上映っていうのをやっていて、それは自分も歌っていかないとお客さんも歌えないだろうと思って積極的に歌ったっていうのはありますね。でも毎年やっているので、もうお客さんは自ら歌ってらっしゃいます。


-今までの企画で手応えがあった、これは面白かった!というのはありますか。


飯島:これが一番っていうのは絞りにくいですけど、マサラ上映でいったら『バーフバリ』のマサラ上映をやって、前後編で5時間超あったんですけど両方マサラ上映をやりました。それはかなりの盛り上がりで、今までのマサラ上映の中では一番でしたね。お客さんの手練れぶりがすごいんですよ。本当にいろんなタイミングがバッチリだし、薄い紙吹雪の入った袋をキロ単位で持ってきてるんですね。紙吹雪が何キロにもなるって相当な量な訳ですよ。それで、シーンに合わせて色も変えるんです。色が変わるサイリウムも、キャラクターによって色が違うんですよ。


-ほとんどライブですね…!


飯島:そうですね。

最終的には紙吹雪が30袋くらい出たっていう。マサラ上映って最後掃除までするんですけど、本当に足が埋まるぐらいの紙吹雪だったんで、ちょっと絶望的な気持ちになりました(笑)。これ片付くのか!?と思って。そしたらみなさんテキパキ片付けて、ゴミ袋とか箒を持って来てる方もいるのでみんなで片付けて、最終的にはずらっと30袋の大きなゴミ袋が並びました。これは最高の数でしたね。


-お客さんが盛り上がって、自ら片付ける。


飯島:そこまでがマサラ上映っていう合言葉があるんですね。「お片づけまでがマサラです。」っていう。それがお客さんにも浸透してるのでほんとに片付けは完璧です。

明確に自分とお客さんを分けていないですね。


-さっきもチケットに押すスタンプを作ってましたけど、これまでにそういった細かいところの工夫もたくさんありますか。


飯島:色々ありますけど、お金がないので知恵を絞るしかないんですよ。そういう意味では、今までに何度もお金がないことを逆手にとって、工夫を凝らしてやって来たことは多々ありますね。


-お金がない分、手間をかけたり知恵を絞るってすごくエネルギーが必要だと思います。それをずっと続けていますよね。


飯島:工夫で乗り切るっていうのは楽しさもあるんですよね。これでできたじゃん!っていう。お金をかけなくてもこれをすることで出来たっていう達成感みたいものがあります。


-なるほど。考える前にやってみる感じですか。


飯島:うん、あんまり考えてないですね。とりあえず走っとくみたいな。

いろんな企画もだいたいノリで思いついて言い出すんです、私が。テレビに出た企画もあって、『レ・ミゼラブル』を初めてやった時かな。“歌いながらチケットを注文すると割引”っていうミュージカル割をやったんですね。そしたら、ナニコレ珍百景が取材に来てテレビにも出たんです。でもテレビに出る前から皆さんかなり反応してくださって、ご利用される方もいっぱいいたんですよ。結局170名が歌われたんですけど、結構みんな歌いたいんだなと思いました。もともと私自身も、映画を見ながら“レミゼ”の歌を歌いたいっていうのがあって。これは合唱上映をやったらいいのではないかと思って次の上映からはずっと合唱上映をやっていて、毎年6月になると『レ・ミゼラブル』の合唱上映をやっています。


-いろんな企画をやり続けるモチベーションというのは、お客さんを喜ばせるためですか。それとも自分も楽しむためでしょうか。


飯島:単純に、これをやったら面白いんじゃない?っていうだけですね。お客さんもそうだし自分も面白いし。うーん…そこまで明確に自分とお客さんを分けていないですね。自分の立場で面白いっていうのとお客さんの立場で面白いっていうのがもちろんあると思うんですけど、どちらかというと一緒に盛り上がりたいところがあるので。あんまり自分の中で区別してないかもしれないです。


-今後スカラ座でどんなことをやっていきたいですか?今までやっていない企画とか。


飯島:なんですかねえ。やってないことを思いついたら多分やってるので、現時点ではこれっていうのはないですけど(笑)。大体家でシャワーを浴びてる時とかに、あ!って思いついたりするんですよ。それでみんなに話して、「それはちょっと…。」って言われる時もあるし、「いいね!やろうよ!」って時もあるし、そうやってできていく感じですね。本当に思いつきです。割引のアイデアは相当却下されてますけどね(笑)。


川越スカラ座は言うまでもなくその建物・ロビー・客席・グッズなどなど、細部に至るまで魅力に満ちている。不思議と落ち着いてしまう空間は監督とのトークだって長引かせる。お客さんは映画を観た後に何か話したくなる。しかし、その空間を作り出しているのはやはりここで働いている”人”なのだ。脈々と引き継がれたここに関わるスタッフが、この映画館を守っている。いや、攻め続けている。ここで紹介できなかったスタッフも含め、川越スカラ座は”楽しい”という言葉でいっぱいだった。



text & photo & movie : 深田隆之

【écouter】-エクテ-

【écouter】-エクテ- とは、 フランス語で【聴く】という意味。 映画・あるいは映画館にまつわる様々な人たちの話を聴いてみたい。 そして紹介したい。 その先に、また新しい映画との出会いがあるはず。

0コメント

  • 1000 / 1000